Freshfieldsが検討するAI部門の分社化と、法律事務所の稼ぎ方が変わる可能性

Freshfieldsが検討するAI部門の分社化と、法律事務所の稼ぎ方が変わる可能性のイメージ

ニュースの概要

英国系の大手法律事務所Freshfieldsが、社内で育ててきたAI・リーガルテック部門「Freshfields Lab」を、独立した会社として切り出す案を検討していると報じられた。関係者に共有されたメールが情報源とされ、外部の投資家から資金を受け入れ、他の法律事務所や大企業の法務部門にもサービスを売る構想だという。将来の事業価値は数十億ドル規模になり得るとの見方も出ている。ただし、現時点では検討段階の話であり、正式な発表や最終決定が出たわけではない。実現すれば、法律事務所が自らの技術を外販する大きな事例となり、業界の収益モデルに影響を与えそうだ。

引用元: Freshfields、AI・リーガルテック部門の分社化を検討か(Ground News)

分析・見解

事務所の内製ツールが商品に変わる転換点

法律事務所は長く、時間単位の報酬(=働いた時間に応じて請求する方式)で稼いできた。AIが文書の下読みや契約書の確認を速めるほど、請求できる時間は減る。効率化が売上を削るという、皮肉な構図である。そこで成果を時間ではなく製品として売る発想が出てくる。今回の分社化案は、その流れの上にある。

これまで大手事務所の技術部門は、自社の弁護士を助ける裏方だった。切り出して外販するなら、製品開発や営業、顧客サポートが要る。必要な力は法律の知識より、ソフトウェア会社の運営に近い。弁護士の組織がその文化を持てるかが、最初の試金石になる。

外部資金を入れる狙いは開発費と人材の確保

事務所のパートナー制(=弁護士が共同で出資し、利益を毎年分け合う仕組み)は、数年先を見た大型投資に向きにくい。利益を分ける側の弁護士にとって、赤字覚悟の開発費は自分の取り分を減らすからだ。外部投資家を入れれば、この制約を外せる。

もう一つは人材である。優秀なエンジニアは、株式報酬(=会社の株を受け取る形の報酬)を重視する。法律事務所の中では出しにくい報酬だが、別会社なら設計できる。数十億ドルという見立ても、資金と人材の両面で成長を描ける前提があって出てくる数字だろう。

競合事務所が顧客になるかが最大の難問

最大の壁は、ライバルが使ってくれるかどうかだ。法律事務所は顧客の秘密を預かっている。Freshfieldsの子会社を使えば、自分の案件の傾向が筒抜けになるのではないか。そう考える事務所は多いはずだ。親会社との情報の遮断や、第三者による監査を示せるかが問われる。

前例はある。Allen & Overyは2023年に法律特化のAI企業Harveyをいち早く導入し、のちに同社は大きな資金調達を重ねた。Thomson ReutersもAIの法律検索会社Casetextを約6億5千万ドルで買収している。ただし、これらは事務所の外で生まれた会社だ。事務所発の技術会社が中立的な立場を得られるかは、まだ答えが出ていない。

本当の商品はAIより検証済みの現場知識

独自の見方を一つ加えたい。AIモデル自体は、汎用の製品が急速に追いついてくる。差がつくのは、どの場面でAIがどう間違えるかを知っていることだ。大手事務所には、実際の案件で磨いた確認手順や、誤りを見抜くための評価用の資料がある。これは外部の技術会社が簡単には手に入れられない。

つまりFreshfields Labが売るのは、プログラムそのものより「検証済みの使い方」になる可能性が高い。そうなれば競争相手は、AI企業だけでなく、会計事務所系や法務サービス会社にも広がる。

ビジネスへの影響

法務部門が契約前に確認したい三つの点

事務所系のAIサービスが増えると、企業の法務部門は選択肢が広がる。ただし、導入前に確認すべき点がある。第一に、入力した文書が学習に使われないか。第二に、提供元と顧問事務所の関係で、自社の情報がどこまで共有されうるか。第三に、AIの誤りが出たときの責任の分担である。いずれも契約書に明記させたい。機密性の高い案件では、自社のサーバー内で動かす形が選べるかも聞いておきたい。

価格にも注意が要る。事務所の看板が付くと割高になりやすい。まず小さな案件で試し、人が確認した場合との差を数字で記録するとよい。

顧問事務所を選ぶ側の視点も変わる

今後は、弁護士の人数や実績に加え、AIをどう使って費用を下げているかが比較の材料になる。見積もりの際に、AIで短縮できる作業と、弁護士が必ず目を通す作業を分けて説明させるとよい。時間単位の請求が続く場合、効率化の成果が報酬に反映されるかも確認したい。定額や成果に応じた料金への切り替えを交渉する好機でもある。

中小の事務所や企業は使い分けを軸に考える

自前で開発できない中小の事務所や企業にとって、外販は追い風になりうる。ただし一社に頼り切ると、価格改定や方針変更の影響をそのまま受ける。データを書き出せる形式で保管し、乗り換えられる余地を残しておくことが大切だ。

また、今回の分社化はあくまで検討段階の報道にすぎない。決定を前提に動くより、公式発表を待ちつつ、社内で使うAIの評価基準と確認手順を整えておくのが現実的である。

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