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カーブアウトの情報開示を型で管理する時代へ、分離開示テンプレートが変える売却実務

カーブアウトの情報開示を型で管理する時代へ、分離開示テンプレートが変える売却実務のイメージ

ニュースの概要

リーガルテックVDR(バーチャルデータルーム=M&Aなどで機密資料を共有するオンライン保管庫)が、事業売却やカーブアウト(=会社の一部事業の切り出し)を対象にした「分離開示管理テンプレート」の提供を始めたと、PR TIMESで伝えられた。売却する事業と、売り手に残る事業とでは、買い手に見せてよい資料の範囲が異なる。そこで開示の線引きをあらかじめ型として用意し、公開範囲を管理しやすくする狙いと読める。細かな機能や価格は発表内容の確認が必要なため、本稿では実務への含意に絞って考える。

引用元: リーガルテックVDR、事業売却・カーブアウト向け「分離開示管理テンプレート」を提供開始(PR TIMES)

分析・見解

一社の中から事業だけを切り出す難しさ

通常の会社売却では、会社そのものが売り物である。見せる資料も会社単位で整理しやすい。ところがカーブアウトでは、売る事業と残す事業が、同じ契約書、同じ帳簿、同じ社内システムに混ざっている。

たとえば取引先との基本契約が全社で一本だけ、という例は珍しくない。この契約を丸ごと見せれば、売らない事業の価格条件まで買い手に漏れる。分離の難しさは資料の量ではなく、一枚の中に混ざった情報の切り分けにある。

開示の線引きを型にする意味

今回のテンプレートの価値は、機能そのものより「先に線引きを決める」という手順を製品に埋め込んだ点にあると考える。従来のVDRは、フォルダを作り、閲覧者ごとに権限を付ける道具だった。線引きの判断は担当者の頭の中と、メールや表計算ソフトにあった。

判断の根拠が記録に残らないと、後で買い手から「なぜこの資料は黒塗りなのか」と問われたときに説明しづらい。型があれば、判断の理由も一緒に残せる。担当者が替わっても、同じ水準で開示できる点も大きい。

競合が買い手のときに必要な段階開示

もう一つ見落とせないのが、買い手が競合企業である場合だ。価格表や顧客別の利益率を見せれば、交渉が決裂したときに不利益だけが残る。欧米では、少人数の限定チーム(クリーンチーム=機密を扱える限られた担当者)にだけ見せる運用が広く使われている。独占禁止法上の情報交換のリスクを避ける手段にもなっている。

日本でもM&Aが増えるにつれ、同様の配慮が求められる場面が増えている。段階的に開示するという考え方を、ツール側が前提にし始めたことは自然な流れだ。

売却が終わった後まで続く記録の価値

最後に、売却が完了した後の話がある。移行期間中は、旧社と新社が同じ資料を参照し続けることが多い。閲覧記録や開示履歴が残っていれば、表明保証(=売り手が資料の正しさを約束する条項)をめぐる争いのとき、何をいつ見せたかを示す証拠になる。開示の記録は交渉の道具であると同時に、売り手を守る保険でもある。

ビジネスへの影響

売却を考える企業が今から準備できること

まず、切り出し対象の事業にひもづく契約書を洗い出し、全社契約と事業別契約に分けておく。次に、資料ごとに「全面開示」「黒塗りで開示」「最終段階まで非開示」の三段階を割り当てる。これを売却の話が出る前にやっておけば、交渉が始まったときの準備期間を大きく短縮できる。

テンプレートを使うかどうかより、この仕分け表を自社で持っているかが重要だ。ツールは仕分けの結果を運用に移す手段にすぎない。

ツールを選ぶときに確認したい三つの点

一つ目は、閲覧者の区分を細かく設定できるか。二つ目は、黒塗りした資料と原本の対応を管理できるか。三つ目は、開示履歴を後から取り出せるか。費用はデータ量や利用期間で変わるため、複数社に見積もりを依頼して比べたい。

顧問弁護士やアドバイザーと運用ルールを共有できるかも見落としやすい。ツールだけ導入しても、判断する人が決まっていなければ線引きは進まない。

中堅企業にとっての現実的な使い方

大企業向けの手続きに見えるが、中堅企業の不採算事業の整理や、後継者不在による事業譲渡でも同じ問題が起きる。件数が少ないほど担当者が不慣れになりやすいので、型に頼る価値は大きい。ただし、最初から全資料を載せる必要はない。まず財務と契約の二分野から始めるのが現実的だ。

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